“声の彩り”を添えて。「VoiceVoice」代表・益田真里子

「声」を意識して過ごしてみたことはあるだろうか。駅で、ショッピングセンターで、テレビやラジオで。私たちは機械の声や人間の肉声により、耳からさまざまな情報を得ている。
そんな「声」を生業にし、その価値に重きを置いている集団がいる。益田真里子さんが代表を務める「株式会社VoiceVoice」だ。
「私は、声に出して発することの大切さを伝えていきたいんです」。益田さんにその思いをたずねた。

「話す」喜びを感じた学生時代。やがて訪れる不遇。

鈴の鳴るような声。益田さんの声には、そんな言葉がぴったりだ。コロコロとした軽やかな音の連続が、空気を振動させて私の鼓膜に優しく伝わる。

愛知県津島市に生まれた益田さん。テレビCMやラジオなどのディレクターだった父親と、地方でタレント活動をしていた母親のもとで育った。

「テレビを見ていると、合間に父が手掛けたCMが流れたりして。そうすると父はおもむろにテレビに向かってパチンと指を鳴らすんです。そうするとカットが変わったり音楽が流れだしたり。幼いながらにそういう父をかっこいいと思っていました。父が作ったCMだから、どこでなにが起きるかわかっていて当然といえば当然なんですけどね(笑)。母もメディアに出る仕事をしていたので、子どもの時からテレビやラジオはよく見る環境でしたね」

眠る前の日課は、母親の読み聞かせだったという。豊かな表現を、いくつもの声を使いわけて読み替える母親に、憧れと尊敬を抱くようになったそうだ。そんな益田さんは、父親になにげなく連れてこられたパーティで、業界の人に声を褒められて初めて、自身の声が個性的だということに気付いたという。

もっと褒められたい!。その思いは、幼い益田さんをどんどん「声の魅力」に気づかせていく。小学生、中学生と、国語の音読の時間は、さながら益田さんのオンステージ。先生から「益田はうますぎるから他の学生を当てられないぞ」と言われたこともあったそうだ。放送部に入ったり、仲間と演劇や朗読をしたり……。益田さんは、声を使った表現の世界にどんどんのめりこんでいった。
「声を使って、こんなにいろいろなことができるんだ!」。そう気づくのに時間はかからなかった。

「声を活かした仕事に就けたら」。益田さんの中にそんな思いが芽生える。母親の一言で、ナレーターやMCのプロを育成する「NTC事務局」で学んでみることにした。バブルがはじけたばかりの混沌とした時代だったが、幸いにも名古屋という土地柄、パチンコメーカーや自動車関連の仕事で「声」は重宝された。私は驚いてしまったのだが、カーナビが出始めた当初は、【この先】【信号を】【右折】【です】など単語ごとに全て人の声で吹き込んでいたのだそうだ。

「そりゃもう、ものすごい作業量でしたよ!交差点の名前とかも全部単語で録音するんですから。でも、私たちは1時間あたりいくらというギャラですから、当時はそういうお仕事はとても助かりました。それこそ、自転車で現場から現場をハシゴしてましたね。声を出していられる時間が、大好きでした

その後結婚、子育てを経験。6~7年の間、いったん現場を離れた。だが、自身の胸のうちにフラストレーションにも似た焦燥感が沸き起こる。

声を出したい!!って、もうそれだけ(笑)。我ながら笑ってしまうんですけど、思いっきり声を出して何かを表現したくて、うずうずしていました。本屋さんに押しかけて、『私!読むのうまいんですけど!読み聞かせとかできるんですけど!』とか言ったりして(笑)。あるとき、娘の習い事の先生に頼まれて、司会をやったことがあるんです。そのとき、ママ友に言われたんです。『益田さんもったいないよ。プロとしてちゃんとお仕事したほうがいいよ!』って

悩んだが、やってみることにした。もう一度、声を仕事にしよう。

だがそんな時に、未曽有の大災害が起こる。平成23年3月11日、東日本大震災だ。いくつもの企業に「会社が、社会全体が今こんな状態では、声の仕事にギャラをお支払いできない」と言われた。悲しいが、気持ちはわからないでもない。再び悩み始めた。

「ある時、仕事を通じて知り合った人から、『人材を育成してみたら?』って言われて。ああ、その考えはなかったなって。うまくいくかわからなかったけど、なにもやらないでいるよりは全然よかったから。2011年、個人事務所を立ち上げてみたんです」

そういう目線で「声の仕事」を見てみると、それで生計を立てていきたいと思っている人は多いということに気づいた。だがそのほとんどが、実力とは裏腹にギャラが少ないことに悩んでいた。どれだけ思いを込めて読んでも、何度リハーサルをしてどれだけの時間を割いても、それが現実だった。この現実に直面したとき、益田さんは、とある使命を負った気がしたという。

これ、ちゃんと仕事にしなきゃ。『声なんて誰でもいいよ、なくてもいいよ、機械でいいよ』。そんなこと言われているようで、なんだか悔しくて。私が何とかしなくちゃって」

益田さんの挑戦が始まった。

声の魅力を伝えるために。

「VoiceVoice」のタレントらがナレーションのレッスンを受けていると聞き、現場を訪れた。場所は、名古屋市内某所のレコーディングスタジオ。

ひとりひとりに課題が渡される。実際に放送されているテレビCMのナレーション部分だけを消し、映像に合わせて自身で声を吹き込んでいく、というレッスンだ。商品の背景や作り手の意図、ターゲット層など、講師から細かく指示があり、そこから想像を膨らませ、15秒という限られた時間の中で良さを伝えていく。

「もっと大げさに、おいしそうに」「やりすぎ。嘘っぽく聞こえる」「最初はテンションを少し押さえて、大切なところを盛り上げて」……。なんという細かな指示だろう。その要望にすぐさま対応し、声や表現を柔軟に、的確に変えていく。自分の声を聞き分け、音にしていく。それはまるで、耳かき半分ほどの匙から塩を1粒ずつ落としていくような、それくらいの“匙加減”の世界。

タレントの一人に話を聞くと、「声の引き出しをたくさん持つ練習でもありますが、現場でディレクターのキューにすぐ反応できるようになるためや、自分らしいクセを打ち消すための練習でもありますね」と話してくれた。現場で、「もう一度」は何度も通用しないのだ。それが「プロ」だからだ。

講師の方にも思いを聞くことができた。

「いいナレーターというのは、引き出しが細かく、中に何が入っているかを把握している。あとは体内時計。事前のちょっとした打ち合わせだけで、このくらいのスピードで、テンションで、こう話せば伝わる、という感覚が身についているから現場がスムーズ。そういうナレーターは強いですね。それから、質問も多いです。『これはこういうことですか?背景を知りたいんですが』と聞いてくるんです。聞くなら、出来なきゃダメですけどね。わかりました、で出来ないのはプロじゃないです。『VoiceVoice』も声のプロとして、こういったレッスンをどんどん重ねて、幅広い場面で活躍できる力を身に付けてほしいですね

レッスンを終えた益田さんは話す。

声は、文字や映像に彩りを添えるための大切なものだと思うんです。関わった人に思いを聞いたり、感情をこめて伝えたり、間や息づかいで印象的に感じさせたり……。そういうのって、決して機械ではできません。AIがダメとかいうのではなくて、人間の声だからいいね、って言われる活動をしていけたらと思っています

自社の製品をより魅力的に伝えたい。華やかにイベントを盛り上げたい。声のぬくもりで感動的な場を作りたい。そう思うことがあれば、ぜひ「VoiceVoice」のメンバーに相談してみるといいだろう。
きっと、たくさんの彩りを持った彼らが理想の現場を作り上げてくれるはずだ。

株式会社VoiceVoice
名古屋市中村区名駅南1丁目23番14号 ISE名古屋ビル405
TEL :052-778-8434
http://www.voicevoice.jp/index.html
(リンク内にボイスサンプルあり)

撮影協力:be blue studio

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