蕎麦屋を見つけてUターン。
愛知県江南市に訪れました。お昼はお目当てにしていたラーメン店があったので、そこへ向かっていたところ、道沿いになんともシックな佇まいの蕎麦店を発見。
急遽引き返し、入店することに!
橙色の引き戸に若草色の暖簾がはためいて、まるでこちらをいざなっているよう。
早速入店してみましょう。
店内は、テーブルが3席とパーテーションで仕切られたお座敷が4席。お座敷は掘り炬燵になっていて、ゆったりとくつろげます。
こちらの魅力は、北海道や福井などといった蕎麦の産地から取り寄せ、店で手打ちしているという点。ざるやとろろ、鴨南蛮などの定番メニューを温冷から選べます。小鉢やミニ天丼などがついた御膳もありました。
お品書きには「少々お時間頂戴します」と書かれていますので、時間にゆとりをもって待ちましょう!
カドが立つ細打ち蕎麦。
こちらは二八蕎麦。細打ちでカドが立っており、さらりといただける一枚です。
意外だったのは、つゆの量が少なめだったこと。手前に写っているつゆ入れの1/3くらいかな?
関東風で醤油がしっかり効いていたので、つけすぎないためにこのくらいの量にしてあるのかもしれないと思いました。
そして「あふひ」は、季節の一品料理とお酒を楽しんだあとに蕎麦でシメる、江戸らしい「蕎麦前」の楽しみ方を提案している店。その前提があるのならば、このさらりとした蕎麦の風味も、少なめのキリっとしたつゆもうなずけます。
もちろん、蕎麦湯もいただきましたよ!濃厚なつゆを贅沢に飲み干せて、大満足♪
季節の温かい蕎麦もおすすめ
こちらは、しめじやなめこ、しいたけにえのきといったきのこ類がたっぷりと入っているきのこ蕎麦。
ややとろみのあるつゆが食べやすい一品です。きのこの出汁が出ていて、こちらも飲み干せてしまう味です!
御膳なのでミニ天丼もセットに。薄めの衣ながらカリッと仕上がっており、こちらも絶品。ほどよい量なので、食の細い方でも安心していただくことができそうです。
気になる店名を解くカギは……「広重」と「蕎麦」にあり!
お蕎麦も上品でおいしく、さらに居心地も抜群な「あふひ」。ただ……この店名がずっと気になっており。
どーしてもどーしても、うずうずしてしまってしょうがなかったため、思い切ってレジの店員さんに尋ねてみると、どうやら「歌川広重」に関係があるということを聞くことができました。
「店主が詳しいので呼びましょうか?」とお申し出いただきましたが、お忙しいランチタイムにご迷惑なので控えました!ありがとうございますー!
歌川広重といえば、東海道五十三次などに代表される江戸時代の浮世絵師。広重と「あふひ」の名前の間にどんな関係が……?
気になったらすぐ調べる!それがMEETS ME(ドヤ)。
独自調査によると、広重の残した作品の中でも遺作として知られる「名所江戸百景」の中に、「虎ノ門外あふひ坂」という巻があるようです。「名所江戸百景」は、江戸の市中と郊外の景観を主題にし、四季折々の美しい江戸の名所を描いたもので、歌川広重の遺作にして晩年の傑作といわれています。虎ノ門は、現在も東京の地名に残っている、あの虎ノ門です。赤坂付近にありますね。「あふひ坂(葵坂)」は明治ごろ埋め立てられ、現存しないようです。
12月のある日のこと。晩年の広重は、大名屋敷と寺のある風景を描くためこのあたりを訪れていました。やがて日も暮れてきて、寒さに肩を震わせていたころ、お濠の近くに2軒の蕎麦屋台があるのに気づいたそうです。そのうちの1軒に入り、温かい蕎麦を待つ間、あたりをじっくりと眺めてみました。寒々しくもしっとりと湛えられている水面や、夜空にきらめく星、坂の上に見える枯れた木。なんとも絵になる光景でした。
やがて目の前に蕎麦が提供されます。温かいつゆを一口すすって、広重はほっと一息つきました。
すると、こんな寒い夜空の下、ふんどし一丁で駆けていく2人の男性を見かけます。蕎麦屋の店主がどこへ向かうのかと問いかけると、「金毘羅さまへの寒三十日裸参りへ」とのこと。江戸らしいその光景にはっとした広重は、この葵坂での寒空の一夜を切り取ろうと決めたのだそうです。
広重の作品はほとんどがパブリックドメインでした。助かりました。
こういう話、大好物です。昔の絵画を紐解き、現在の土地と照らし合わせて、当時の作者の心情に思いを馳せる。
これぞまさに、粋。そして、おそらくそういった背景で店名をつけた店主も粋ではありませんか。
店名ひとつにいろいろと思いを巡らせてみるのも楽しいですよね。次回訪れた際は、店主がもしお手隙だったらじっくりこのお話を聞いてみたいと思いました。
ごちそうさまでした!
蕎麦と料理 あふひ
愛知県江南市高屋町本郷165-1
0587-50-7533
11:30~14:30 (L.O.14:00)、18:00~21:30 (L.O.21:00)
不定休
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