問題をあえて抽象化して考えることの大切さ。

コロナを通してお話をしていただいたが、その如何に関わらず、スタートアップ企業は既成概念を破壊するところに価値がある、と話す鳥羽さん。それを「破壊的イノベーション」というが、その現象について聞かせていただいた。

「ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセンという人物が提唱した理論で、自社の都合や競合他社の動きを注視するあまり、全く新しいイノベーションに気づけずいきなり企業が市場から淘汰されることを指します。例えば、今だと航空業界や鉄道業界。コロナのせいで人の往来がなくなったから経営が悪化していくと思われがちですが、実はそうじゃないかもしれない。業界は全く違いますが、zoomなどオンラインコミュニケーションサービスが普及していけば、ビフォーコロナの時の市場規模には戻らないでしょう。
これは先ほども申し上げたような『大富豪』における『革命』ですね。コロナであろうとなかろうと、この『破壊的イノベーション』をスタートアップ企業が起こすことが大切なのではないかと。人の価値観が変わりつつある今の状況では、いい意味でそれが起こしやすいと思います」

さらに鳥羽さんは「可処分時間」の使い方が重要になってくるとも言及した。個人が一日のうちで使える余剰の時間のことである。コロナであらゆるモノ・コトの価値観が一変し、脆弱さが露見した今、余暇をどう“過ごさせるか”という市場でビジネスが展開されていくことは予想ができそうだ。

「でも僕思うんですけど、僕がやっていること…スタートアップって、登山みたいだなあって。山頂が見えないんですよ。自分で山のゴールを設定しなきゃいけない。山頂がないから道もない。ってことは道も作らないといけない…。けれどあるとき気づいたんです。小さな通過点をいくつもいくつも設定して、それを通っていけば、なんとなく道にはなるんですよ。一気に道が作れなくても、それを毎日続けているだけでも別にいいんじゃないかなって。
で、たまーに投資という名のおにぎりとか水とかが支給されて(笑)。『これやるから絶対止まるなよ』って言われているようなものですよ(笑)。それを燃料に頑張るんすよ。いくらお腹が空いてご飯くれーって言っても、投資側が『コイツもうダメだな使えねーな』って思ったら差し入れ打ち切りですから。キビしい世界ですよ

誰も予想ができない市場で、新たなモノ・コトを生み出していく。
足元の悪い山道を全速力で駆け抜ける不安や、霧中で足を踏み外す恐怖も抱くだろう。ただそれでも鳥羽さんが足を止めないのは、「世の中を新しい価値観でよりよくしていきたい」という思いがあるからだ。

そんな鳥羽さんの“問題への気づき”と“アイデア”について聞いてみた。どんなことを問題として捉え、そこにどのようにアイデアを膨らませていくのだろうか。

物事を抽象化する、ということは大事にしていますね。例えば雨の日に『傘を持たずに済む方法』や『雨に濡れずに済む方法』を考えるのではなく『雨を降らせない方法』を考える、というのかな。本質的な問題に気づくために、具体的に考えていくのではなく、あえて一旦抽象化して物事を見るという感覚です

アイデアは、幅広い情報収集から得た基礎情報と、疑問を細分化して得た特殊情報を組み合わせるところから始めています。そこで問題自体を俯瞰で眺めて、こういう解決はどうか、こうしたらどうなるだろうか、と考えるようにしています。そうやって世の中を見ると、日常に対する小さな不満を持つことは大切ですよ。意外なところから解決の糸口が見つかるかもしれませんよね。不満を言っているだけではクレーマー。解決しようと行動したら起業家ですから

鳥羽さんが仕事をする上で信条にしている言葉があるという。

『義を見て為ざるは勇なきなり』という言葉です。世の中で義憤に駆られていることを見過ごすのはダメなんじゃないかって。そのためにはまず自分を整えること。次に家族や友人、仲間の幸せを考える。それから地域、社会、そして日本、世界。どれほど、大きな幸せを実現したいと言っていても、自分がちゃんとしていないと何も変えられない。まずは己を鍛えることを大切にしています」

問題や課題にぶち当たったとき。その本質を捉えようとして深層に切り込んでいき、解決策を求めることはよくある話かもしれない。
しかしそれが必ずしもいいとは限らない。時には抽象化して物事を見ることで盲点に気づけたり、思わぬアイデアが浮かんできたりすることもあるのだ。
それがもし、誰しもがあっと驚くような新しい価値観だったら?
スタートアップ企業でなくても、小さな不満から生まれたきっかけは、いずれあなたの身の回りを、少しだけよくするかもしれない。

活発なイノベーションの中心に身を置いて、令和のサムライは己の刀に磨きをかけていた。

あなたの中に宿る刀は、輝きを失ってはいないだろうか。
感じ取り、想像し、挑戦することを、諦めてはいけない。

Text:光田さやか
Photo:荻野哲生

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