自分らしい生き方は、“時間の使い方”次第で見つけられる。――兼業主夫・伊藤彰洸

「働き方改革」。この言葉ほど、世の中に独り歩きしているものはない。労働時間を短縮したり、積極的に休みを推奨したり。そういった涙ぐましい企業努力は大いに結構だ。しかしその恩恵で暮らしが豊かになったという人は、いったいどれだけいるのだろうか。

朗らかにほほ笑むこちらの男性。実は「働き方改革」をしたうちの一人。現在の職業は「兼業主夫」という、伊藤彰洸さんだ。
「働き方改革っていうと大げさですね(笑)。自分の時間を見直して、ちょっと有効的に使ったら、この生き方になっていたというだけです。僕にできたんだから、誰でもできるんですよ!」と伊藤さん。そのきっかけを尋ねた。

働く妻を支えたい!成績優秀な商社マンが選択した「主夫」という生き方。

お話を聞く前に、現在の伊藤さんの日常を少し教えていただいた。
起床後、子どもたちの朝食を手早く作り、7時前に出社する奥さんを見送ったら今度は小学校へ行く長女の支度。無事に送り出したら長男を保育園へ送迎し、やっと一息。

…つかない。一息は、まだつかない。伊藤さんの朝はノンストップだ。9時までに家の掃除や後片付け、ゴミ出しに洗濯。その日の予定の確認も済ませる。「家のことはとにかく9時までに終わらせるんです。絶対終わらせるぞー、って!ちゃんと終わったら気持ちいいし!」と伊藤さんは目を輝かせた。
9時から12時までは自身が代表として運営する貿易事業に費やす。パソコン業務や対外的な電話連絡が主だ。伊藤さんのビジネスとしての収入はこの部分にあたるという。午後からは食材の買い物をしたり、趣味の時間にあてたり、家族のために使ったり。夜ご飯もお風呂の支度も、担当は伊藤さんだ。

もっぱら最近では、お菓子作りや娘のMioちゃんのプロ歌手活動サポート、そしてなんと自身のアイドル活動(!)にも積極的な伊藤さん。毎日がとても充実しているのは、日々の生活の様子を聞くだけでも充分に窺い知ることができた。

この生活を始めたきっかけを聞いてみる。伊藤さんは屈託のない笑顔で即答した。「簡潔に言えば、妻が外で働いて、イキイキしているのを見るのが好きだったからですね(笑)!」と。

詳しく聞いていくと、伊藤さんはもともと大手企業の商社マンだった。自動車関連部品に関わる仕事をしていたこともあり、会社の経営も安定そのもの。成績も待遇もよかったと当時を振り返る。一見すると誰もがうらやむような働き方をしていたが、伊藤さんの中にあったのは「自分で経営をしてみたい」という思いだった。

「大学時代に経営を学んでいたんですが、そのときから自分で起業したいという思いはありましたね。自分で社長と名乗ったり、自分の力を試したり。ホリエモンのビジネス書も愛読していて(笑)、自分でビジネスをすることにずっと関心がありました」

そんなとき、なにげなくネットビジネスを始めてみた。モノが売れるうれしさ、やりがい、おもしろさ。いつでも順調だったとは言い難いが、伊藤さんは「自分で采配する仕事」にとても魅力を感じていた。気づけば一年間で100万円以上も売り上げていた年もあったそうだ。そこから数年は、会社員と並行してネットビジネスにも精を出すようになっていた。

そんなとき、奥さんの妊娠が発覚。奥さんが産休を取ったことをきっかけに、今後の生活について夫婦で話し合ったという。

「会社員と、ネットビジネス。どっちにしよう?って。会社員のままでいれば、仕事に困ることはありません。けれども、妻への負担は増えるし、仕事が忙しくなれば家族の時間も減ってしまうかもしれない。仕事と、家族と、趣味。僕にとってはこの3つのバランスが大事でした。この均衡がとれていないと、幸せとは言えないんじゃないかって」

そこで下した決断。それが「兼業主夫」だった。商社を辞め、家事を担いながら個人事業として在宅で働く。世帯としての大きな収入は、奥さんで賄う。家族で相談して決めた、伊藤さんの第2のキャリアが幕を開けた瞬間だった。

もともと家事が好きなんですよ。子どもも好き。なにより、妻が外で働いて、イキイキしているのを見るのが一番好きなんです(笑)。だからそれを応援したいなって。自分も自分で、やりたい仕事をやれていますしね!だからもう、今楽しくって仕方ないって感じ(笑)。なんの後悔も未練もありません。だって主夫もネットでのビジネスも立派な仕事でしょ?楽しまなくっちゃ!

コツは“時間の使い方”。働き方を変えるきっかけは身近に。

今では主夫・主婦仲間も増え、充実した毎日を送っているという伊藤さん。しかし本当に伝えたいのは「主夫の良さ」でも「副業のススメ」でもなく「時間の使い方」だという。

「僕は何も、主夫になることや副業を推奨しているわけではなくて。限られた一日の時間を、どう有効的に使うか。その積み重ねが、働き方や生き方を変えていくということを伝えたいんです」

例えば伊藤さんの場合は会社員だったころ、まずは飲み会を全部断ることから始めた。そしてその時間を、副業のために割いた。そうは言っても、先述のように副業も最初から順調だったわけではない。さまざまなネットビジネスを試したが、すぐに成果が出たわけではなかった。
しかし伊藤さんは、本職の知識や経営のノウハウを生かし、独自のビジネスを確立させていった。そのトライ・アンド・エラーが何度もできたのは、他でもない「時間を有効に使えた」おかげだ。
時間ができれば、家族と過ごしても、趣味を楽しんでもいい。まずはそのための時間を作ることが大切なのだ。

伊藤さんのスケジュール表を少し見せてもらったのだが、あまりの細かさに吃驚した。時間単位で、やるべきことが記されているのだ。

今日なにをやろうかな、って考えている時間がもったいないと思ってしまって(笑)。空き缶捨てやトイレ掃除なども、『この日』って決まっている方が動きやすいんですよ。やるべきことは、ダラダラやらない。時間と日にちを決めて確実に終わらせていきます

「メールチェック」「目標確認」「日記」までもが記載されている。全ては、徹底的に時間の無駄を省くためだ。ちなみにリストの中央にある「松岡修造」とはなんなのか尋ねてみた。
「えーっと、松岡修造の日めくりを見るという日課です(笑)。あれ、毎日見ていると前向きになれるしおすすめですよ!」とのことだ。

さらに言えば、自分でやらなくてもいいような仕事は外注のスタッフを雇っているという。これも「他人に時給を支払うことで、自分の時間を買った」という認識でいると話してくれた。

自分の生活を、俯瞰で視る。客観で視る。そうして浮き彫りになってくる、時間や人、出来事の「小さな無駄」をどんどん省いていく。これならば、主婦であろうが会社員であろうが、職業や年齢を問わず誰でも実践できることだ。そうしてできた「時間の余白」から見つけた働き方・生き方。それがたまたま、伊藤さんにとっては「兼業主夫」だっただけのことなのだ。

現在、伊藤さんはこのような考え方や自身の半生を、講演会などで積極的に発信している。時間の使い方を見直すことで生まれた、常識にとらわれない「次世代の生き方」を周知させていくために。

仕事と、家族と、趣味。そのどれもがバランスよく保てていますか?今、幸せって言えますか?って、多くの皆さんの前で聞いてみたい。そんな機会を、これからもっと増やしていきたいですね」

小さな時間の削減から見出した「自分らしい生き方」。そのリアルな声が、今を生きる多くの人に届くことを願ってやまない。
講演会やセミナーの依頼は、Hakobune@umibose.siteまで気軽に問い合わせを。

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