編集だより

まだタイトルを持たない未熟なエッセイその2「エッセイとは」

エッセイを書くにあたり、エッセイとはなにか。を考察してみる。

私はとりあえず、知りたい単語に出会ったときは、①その言葉の意味 だけでなく、②類義語③対義語、そして余裕があれば、その④英単語(または日本語)を調べるようにしている。辞書で「エッセイ」を調べると、「自由な形式で、気軽に自分の意見などを述べた散文。随筆。随想。特殊の主題に関する試論。小論。」と出る。うむ、なんとなくわかる。日記とも違うし、ブログとも違う。論文とも違う。
 そこで私は自分の中で、こう咀嚼した。「日常にありふれた出来事を取り出して、根掘り葉掘り考えを巡らせて、自由に述べること」だと。

 エッセイを書いたことがない私は、恥ずかしながら、尊敬するエッセイイストさんも、「このエッセイが好きだ」という本もない。普段私が書く文章は、事実を客観的に、ありのままに伝えることが大前提で、そこに自分の主観も織り交ぜるようなものだから、エッセイはジャンル違い。
 しかし1年前の1月からこうして自分の媒体を持つようになって、少なからず自分の意見でしっかりと「メッセンジャーな役割」を果たせるようになって、SNSに載せるよりももっと深いところで、自分の意見を述べたいなと思うようになったのである。

 ひとまず近所で一番大きな本屋へ出かけて、「エッセイ」の棚を概観してみた。どれがいいのだろうと、気になったものをちらちらと手に取ってみる。参考にするのだから、自分のテイストにあったものがいい。

10分ほどして、ふと目にとまったのが、群ようこさんの「いかがなものか」という本。ぱらりと適当にめくったページの一行目にこう書いてあった。

「私は『インスタ映え』という言葉がきらいだが、『エビデンス』という言葉もきらいである。」

もう、この一言を見て、この本を買おうと決めたのである。
なんと痛快で、なんと共感できる言葉だろうか。筆者の考えが知りたくなったし、ほかにも共感できるポイントを探したいなと思った。
私の中で定義づけた「エッセイ」に、新たな要素が加わった。

しかしこの「共感する」が難しいところではないだろうか。なぜなら、みんながみんな一様に共感することを書いても、面白くないからである。「カレーはおいしい”食べ物”である」という内容より、「カレーはおいしい”飲み物”である」という内容を書いたほうが、エッセイとしてはきっと面白いのだ。いわば、共感する人口の割合。先の本の中にも「いちいち突っかからなくても、とたしなめる15%の自分を押しのけて、85%を占めているもう一人の自分が譲らない。」という一文がある。
そうか。「いちいち突っかからなくても」と「いやいやそれはどうなんだ」とがせめぎあうような文章か。これもまた、定義の一つに加えておこう。

そして、「いかがなものか」を読んでいて思うのが、結構辛辣で赤裸々だということ。特定の誰かというわけではないものの、「これを体験してこんな嫌な思いをした」とか「これだけはどうしても許せない」とか、そういう切り口で書かれていることが多い。これは実は、私にとっては大問題というか、犯してこなかった禁忌のようなものだ。
…と言いつつ、第一回目の「言葉」では、どうしても書きたくなってあれが嫌いだこれは許せないだと、言ってしまっているのだけれど。

 前述したとおり、普段私が生業にしているのは、事実に基づいた客観的な文章。そこに私の主観は前面に出ない。むしろ、このような文章で私が「私らしさ」を出す部分としては、出来事に対する切り口や質問の仕方だと思っている。だから、日常に起こったあれこれを自分の主観で堂々と書くエッセイは、なんだか少し不安なのだ。もっとチキンな言い方をすれば、アンチが怖い、ということになる。いいのかなあ、こんなこと書いちゃって、怒られないかなあ。書く前からそんなことを考えてしまうほどだ。
 しかし、この「いかがなものか」を読んだ人が不快な思いをしているのだろうかと考えると、決してそうではない気がする。よくよく読み解くと、誰しもが経験しうる題材を選んでいるし、嫌いだ苦手だという批判だけではなく、そこには自分の弱みも正直に綴られている。そこがおそらく、エッセイの醍醐味であり、面白さなのだろう。

最後の要素が加わったところで、私なりの「エッセイの定義」をまとめておこうと思う。

「エッセイとは、日常にありふれた出来事を取り出して、根掘り葉掘り考えを巡らせて、自由に述べること。その中には痛快さや共感性を含んでいて、誰しもに起こりえる題材に対して好きも嫌いも強がりも弱みも織り交ぜ、正直に書くこと」

…こんなこと、これから書いていけるのだろうか。先行きがまったく不透明である。この思いに共感してくれる15%の人がいてくれたら、今回のエッセイとしてはまずまずではなかろうか。

Text: 光田さやか

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