また訪れたい名店

懐深く迎える地域の居場所。三重県松阪市「奥松阪」

 2023年1月、三重県松阪市に「奥松阪」がオープン。地域おこし協力隊として活動する高杉亮さんが、地域の人々とともに手がけた。
地域促進にかける高杉さんの思い(全3回)を第1回から読む

 広々とした土間には、高杉さんが約10年かけて収集したこだわりの器や日用品のほか、奥深いストーリーを持つ食品の数々も置かれており、気に入ればその場で購入することもできる。間取りは昔ながらの「田の字」型で、奥には畳の部屋が2間、階段を上がった2階は高杉さんの仕事場になっている。梁や壁など、使えるものはそのまま利用した。高杉さんの言葉を借りて、地域を家だと例えるならば、「奥松阪」はリビングであり、ダイニングであり、ベッドルームでもあり、はたまたガレージや庭でもあり、職場でもある。地元の人でもそうでなくても、誰でも利用でき、ちょっとした休憩所としてはもちろん、食事や喫茶、さまざまな体験ができる地域の居場所だ。

 そんな「奥松阪」でいただけるのは、松阪市や近隣の多気町の素材を中心にした料理。味噌汁一杯、漬物ひとつとっても、素材それぞれが持つストーリーに敬意を払い、丁寧に調理されていることがわかる。親しみやすさもありながら、ほんの少しの驚きや珍しさを感じられる献立の数々は、フードコーディネーターとしての高杉さんの腕と、思いをともにした仲間の意見が存分に光るものばかりだ。

 これらの内容は週ごとに変わるそうで、その味を楽しみに足繁く訪れる常連客も多いのだという。他にも、スパイシーで風味豊かな手作りカレーや、季節のフルーツを使ったスイーツ、アジアンテイストな創作料理など、ランチからカフェ、ディナーまで個性的なメニューが楽しめる。

「特別、松阪のものだけでやりたいわけではなくて、無添加のリンゴジュースやこだわりの製法によるクラフトビールなど、僕が全国各地で出会ったものをご用意しています。その土地の風土や、作った人のことに思いを馳せてもらえたらうれしいですね」と高杉さん。ひと口ごとに、誰かの思いを感じることができるはずだ。

 高杉さん独自の視点で作られた地域の居場所「奥松阪」。ようやく完成し、運営も軌道になり始めたところだが、実は徒歩数秒のところに宿泊ができる新たな施設を設けようと計画中だそうだ。客のために、地域のために、という思いはもちろんだが、高杉さんを動かすのはやはり「自分たちの暮らしを自分たちでよくしていく」という思いだ。今は名もなきこの場所もまた、中と外をつなぐシームレスな存在になることだろう。

<店舗情報>
奥松阪
三重県松阪市飯高町宮前791
070-9069-4104
ランチ 11:00〜13:30(L.O.) カフェ 13:30〜17:00(L.O.) ディナー 17:00〜20:00(L.O.)
※火曜はランチ・カフェタイムのみ
水・木曜休

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP