生粋人

<第2回>“三浦和也”という男。――三浦太鼓店・六代目三浦彌市

キーワードその2.太鼓の周りに、人を集める。

三浦さんの活動は、実に幅広い。太鼓に関わることならば、日本全国どこへでも行くし、面白そうなことならば、何だってする。

まず一つは、ワークショップの開催。
太鼓の胴を締める「箍(たが)」と呼ばれる部分がある。原材料は竹なのだが、ある日若い社員が「竹の余った部分でなにかできないか」と三浦さんに相談。
三浦さんは「そうだね。じゃあなにか計画してみたらいいんじゃない?面白そうだし」と二つ返事でGOサイン。
世界にたったひとつの、オリジナルブレスレットづくりを開催した。

「かわいいですよね。これ生徒さんがつくったものなんですが、実は、編み方が人によって違うんですよ。基本を教えて、あとは好きにやってもらったみたいです!
実際の太鼓も、竹の本数や編み方はさまざまですから、そういったところから、少しでも興味を太鼓に持ってくれたうれしいですよね」と三浦さん。
でも僕は何にもしてないです。発案した本人に、任せただけ。入社1年目で覚えることだらけなのに、頑張ってくれましたよ。うれしかったです」

「ブレスレットづくりワークショップ」発案の、しゅんた丸さん。

三浦さんは、仲間の意見をとても大切にする。傾聴し、把握し、助言する。
そうして仲間の力を借りることで店を大きくしていくことが、なによりうれしく、ワクワクするのだそうだ。

次にご紹介するのが、味噌六プロジェクト。

地元岡崎の名産「八丁味噌」の仕込み桶として使われていた古い桶を再利用して、巨大な太鼓を作り、岡崎の新たな祭り文化を生み出すというものだ。

「四国で行われたある祭りに参加したときに感じました。
人と人とをつなげ、人と地域をつなげ、人と先祖をつなげ、そして人と自然をつなげる。祭りの文化にはそういうものがあるんです。
僕も太鼓を通じて、岡崎に新しく“人が集まる場所”としてなにかできないかと思い、始めました」

今年で3年目を迎える、このプロジェクト。
毎年各地から人が集い、知恵が集う。一人ではできないことを、皆でやる。
地元の伝統を守って来た味噌桶は、直径2メートルにもなる大きな太鼓へと姿を変えて、ひとつの文化へと昇華するのだ。

夜の帳が落ちる祭り会場。勇ましい姿の男たちが太鼓の載った神輿を担ぐ。
熱気が生まれ、地を揺らすような太鼓の音と、群衆の声がうねりとなって、空へと吸い込まれていく。
そんな幻のような一夜は、創業150年を超える三浦太鼓店の新たな歴史の1ページとして、刻まれていくのだろう。

「大人が全力で楽しむ姿を、子どもたちに見せたい、という思いもあります。
ゲームやネットでの遊びが主流になっている今だからこそ、目に見えて参加できる遊びや、その場所を提供したい。『本気の大人って、かっけーな!』って思ってもらえたらいいな」


他にも、50kmウォーク、ボウリング大会、和太鼓フェス…。
三浦太鼓店が仕掛けることはどれもエポックメーキングだ。
周りを巻き込んで前に前にと進んでいけるそのパワーは、どこから来るのか尋ねてみた。

「うーん。そうですね。実は、わからなくなるときもありますよ。僕、小心者なんです。これでいいのかと、いつも悩んだり、進めなかったり。六代目、とは言っているけれど、リーダーの器じゃないなって思うこともあります

意外だった。ではそんなとき、どうしているのだろうか。
第3回のキーワードで、その方法がわかる。

第3回>につづく

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP