流儀その5.「何歳になっても、こうありたいと思うことを見失うべからず」
この連載の冒頭で、光田さんが自身のことを「ミーハーな性格」だと話していると紹介した。大企業といわれる大手百貨店に務めながら、新規事業として銀座六丁目の商業施設を創始。それと同時に、持ち前の明るさと軽快な話術をもって、公私問わず多くの人と対話し、関わり合い、ネットワークを広げ、常に新鮮な情報を交換してきた。自身の、これまでとこれからについて、どう思っているのだろうか。
「百貨店に務めていたときは、多くの社員を見てきたし、お客様とも第一線で関わって来た。当時の上司には、立場上ひっこんでいてくれと言われたこともあったけれど(笑)、常に現場に出て現場を知ることが好きだった。銀座の商業施設で重役を担ってからもそれは変わらなくて、売り場を見たり、お客様の流れを感じたり、テナントさんと話をしたりして。とてもやりがいを感じていました」
現在は、富裕層向けのカード会社という新たなフィールドで、これまでの経験を活かし、あるいは既存を打ち崩しながら働く光田さん。
その決断を下したことに対して、率直な思いを伺った。
「自分の中でも、正直迷いました。50代半ばというこの年齢で、新しい挑戦をしてもいいものかと。けれど、このまま上で留まっていても自分を磨く動機が見当たらないなと思って。自分の中で、それってかっこよくないなって。情報交換ができない場には居たくない。だから、今の会社に身を置くことを決めました」
どの職場、どの立場においても、光田さんが変えなかったこと。
それは「会話で呼吸する」というコミュニケーション力と、常に情報交換ができる場に身を置きたいという「ミーハーさ」、そして「こうありたい自分の姿を見失わないこと」だった。
時代の風潮や会社の動向。
不条理や理不尽にまみれた不透明な関係性。
働く6700万人の大人たちは、多かれ少なかれ、そんな先の読めない混沌の渦中に身を置いているのかもしれない。
しかしそれぞれが自分の武器や個性、理想の自分像を持ち続けることで、渦の流れに抗い、逞しく泳いでいくことはできるはずだ。
今日より明日、明日よりその先。
何かが見えると信じて、 彼から学ぶ5つのメソッドを心うちに留めながら、
もうひと泳ぎしてみてはどうだろうか。
何の役にも立たない仕事など、この世にはないのだから。
Photo:荻野哲生
Text:光田さやか
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