好日写聞録

元(はじめ)に立ち返る。守山区・尾張戸神社で春の奉納

平成から令和へ。新たな時代は先祖に見守られて。

平成31年4月29日(日)・昭和の日。
愛知県名古屋市守山区の尾張戸神社で、春の例祭が執り行われた。

尾張戸神社のある東谷山は、標高198mと、名古屋市最高峰の山である。

爽やかな春の陽気。
今日をこの地で過ごしたいと集まった地元住民らの談笑の声が、そこかしこで聞かれた。

野点(のだて)。
趣味で茶道を嗜んでいるという女性に、一席点てていただいた。
ふう、と一息ついて、去る時代と来たる時代に思いを寄せる。

社務所内では、さまざまに準備が行われていた。

宮司に話を伺うことができた。今日のこの日を、どのような心中で迎えたのだろうか。
「神社は、地域の人のためにあります。地域の人が久しく、幸せであるようにという思いですね。今日ここにお集まりの皆様にも、平成最後の春の例祭を、 この記念すべき時に過ごせたご縁を感じながら、 過ごしていただけたらと思います」

平成から令和へ。時代は変わる。私たちの在り方とは。

「私の好きな言葉なのですが、“便利”と“豊かさ”をはき違えてはいけない。
元号も変わり、「元年」となります。いわゆる、はじめの年ですね。今一度、元(はじめ)に立ち返り、ご自身の暮らしを見直してみるのもいいかもしれませんね。
温故知新の心を大切にすれば、時代が変わっても、大切なものに気づけたり、逆に変わらないでいることもできると思いますよ」

宮司の言葉にはっとさせられる。
元年は、はじめの年なのだ。時代が新しくなったからといって、新しいものばかりが世に出るわけではない。
古き良きものを見つめなおし、それらに立ち返る。
時代が変わる今だからこそ、大切にしたい。

アユチ雅楽会による雅楽の演奏、巫女の舞。
榊を手向け、手を合わせる。

さわさわと風が吹いた。巫女は言う。
「あの時の風に、神を感じた」と。

その後、本殿境内への参拝も行われた。

一年に一度、本殿境内の敷瓦を拝観できるのだ。瑠璃色が実に鮮やか。ひび割れたものは、凍結によるものらしい。

心をこめて。思いをこめて。神と向き合うひとときだ。

神社での奉納を終えた後は、麓にある鰻屋「うなぎ 八勝」へ。

あつた蓬莱軒で修行を積んだご主人が腕を振るうという。予約の客でものすごく繁盛していた。予約なしの我々だったが、運良く15分ほどののち、入店することができた。

パリっと焼成した鰻にさらりとしたタレが馴染む、ひつまぶし。四分割して、セオリー通りいただくことにした。

もう一品は、白焼きを注文。生姜の入った白醤油タレとわさび醤油タレの、異なる2種類の味が、一口ごとに口内を楽しませてくれる。

食後には、周辺の古墳群を巡ることに。
ここ、守山区志段味地区は、地元の有力者と思しき古墳がいくつも点在している。
石だけになった小さな塚や、隆起した土地の中心に祠が立っているものなど、さまざまだった。

長く険しい、急こう配の階段。こんな場所に墓を築いた先祖は、どんな思いだっただろうか。
山頂に佇み、麓を見下ろすと、その気持ちが少しわかった気がした。

平成が終わる。
令和が始まる。
古いものは壊され、新しいものが生まれるだろうが、やはり大切にしたいもの、変わらずにいたいものは存在するのだ。
あなたにとって、それらはいったい何だろうか?

我々がこの日この地を訪れて、先祖や神の佇まいを感じたことは、なにか意味があることのように思えてならない。


尾張戸神社(おわりべじんじゃ)
御祭神:天火明命(あめのほのあかりのみこと)尾張氏祖神。
天香語山命(あめのかぐやまのみこと)
建稲種命(たけいなだねのみこと)
住所:愛知県瀬戸市十軒町845
   愛知県名古屋市守山区大字志段味字東谷209

奉納:舞人 成瀬 朝香
雅楽 アユチ雅楽会

八勝(はっしょう)
住所:愛知県名古屋市守山区大字上志段味字東谷2109-146
TEL:052-736-4875

Photo:荻野哲生・光田さやか
Text:光田さやか

コメント

この記事へのコメントはありません。

RELATED

PAGE TOP