生粋人

<第1回>“知的タフネス”のススメ。他人任せにしなくなる思考力。「スノーフレイク・コンサルティング」中島正博

ここに、たくさんのパズルのピースがあるとする。
バラバラになっていて、なんの絵柄になるのかはよくわからない。
そのため、あなたはそれを組み合わせ、一つの絵柄を作ろうとする。

すると、せっせとピースをはめていくあなたのところへ誰かがやってきて、「完成させると、船の絵柄になるそうですよ」と告げたとする。

さあ、あなたは、どうするだろうか。

「そうですか!ありがとうございます」と答えて一人でやり進める?
「手分けして一緒にやりましょう」と誘う?

そのどちらも、間違ってはいないだろう。

しかし、この状況で「本当にそうなんですか?」「そもそもピースはこれで全部足りているのですか?」と疑問を投げかけるのが、名古屋でコンサルティング・マーケティング事業を営む中島正博さんだ。


中島さんの話し方や考え方は、実にロジカルだ。コンサルティングやマーケティングといった職業は、常に業界を俯瞰し、顧客を客観視し、どこに問題があるのか、やりたいことは明確か、どのような道筋でどんな手段をとるのかを論理立てる必要があるため、当然いえば当然である。

しかし中島さんには、なんというか、不思議な魅力がある。説明は極めて論理的で無駄がないにもかかわらず、やさしく諭すような口調から滲み出る穏やかさや、相手の気持ちに寄り添うような暖かさがあり、解決方法を「先導」してくれるというよりは、ゴールに向かって「伴走」してくれているような気持ちになれるのだ。

「説明は理論的に。でも人を動かすのは言葉や感情だと思っています」

そう話す真意が、彼の持つ不思議な魅力に隠されている気がした。

「言葉好き」が発端に。自分の基礎を形成した「哲学」との出会い。

日頃から発言も思考もロジカルで、法人・個人問わず顧客からの信頼も厚い。「社長の次にその会社を好きになる」を公言している彼のルーツが、まさか「お笑い」にあっただなんて、いったい誰が知り得るだろうか。

「小学生のころからお笑いが好きでしたね。吉本新喜劇なんか大好きでしたよ!高校生のときも文化祭で友人と漫才コンビを組んでステージに立ちましたし、アルバイト先でも漫才大会では先輩と組んで出るなどしていました」

クールでスマートな外見からは想像もできないが、中島さんは、お笑いの「言葉の掛け合い」を分析するのが楽しかったと当時を振り返る。

このボケに対して、こうツッコむ。こういう話で観客を引き込んで、この言葉で共感させる。だから面白いんだ、と。

言葉が人間の行動にどう作用するか、ということに、学生の頃から興味があったんですよね

その一方で、理系科目も得意であったため、ベースでは理系の思考も持ち合わせていた中島さん。しかし、全てが理論や理屈だけではうまくいかないものだ、とも感じていたという。
物事を説明したり、やり方を考えるためには理屈や理論が必要だ。しかし、それだけでは人は動かない。動かすためは言葉の力が必要なのだ。

ロジカルとエモーショナル。そのどちらもをハイブリッドさせれば、きっと何事も面白くなる。学生時代の中島さんは、漠然とそう感じていた。

そんな中島さんが学生時代に夢中になったこと。それは「哲学」の授業だった。

「哲学」と聞くと、一見つかみどころがなく、人類が考え続けるべき壮大なテーマ、という印象がある。しかし中島さんにすると、突き詰めれば「厳密な言葉の運用によって世界のありさまを紐解いていく学問」なのだという。

「たとえば、◯◯的、という言葉があったとして、それをなんとなくのニュアンスで話すのではなく、それはどういう意味なのか、この概念はどういうものなのか、というところをちゃんと理解する。それを曖昧な理解のまま進めていたら、いつか辻褄が合わなくなってしまうんです。
つまり、どういう言葉を使ったらこの思想が理解できるのか。哲学を学ぶうえではそういう『思想の土台』みたいなものがとても重要で、そこに僕は面白さを感じていました。
それまでは、なんとなく理屈っぽく説明しようとしていただけだった。けれど哲学に出会ってからは、言葉の本質を捉えて議論することをすごく意識するようになりました

ある言葉や出来事、概念に対して、ふんわりと認識するのではなく、ロジカルな筋道を立てて細部まで突き詰め、誰もが納得できる状態まで落とし込む。この思考の癖は、大人になった今でも中島さんの根底を支えているのだ。

その後、大学でも哲学を専攻し、より深くのめり込んでいった中島さん。
ロジカルなのに、数式に当てはめるものでもない。考えれば考えるほど矛盾が生じ、その点について追求すればするほど深みが増す。言葉が好きで、ロジカルな思考を持つ自分にはこれ以上ないほど相性のいい学問だと感じていた。

そんな彼が、言葉を「実践的に」運用し始めたことで、また興味の場が新たに広がっていく。
物語の舞台を、少しシックなBARに移してみよう。

<第2回へ続く>

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