<第1回>“正解”は自分が決める。デンソーに勤める僕が20代最後に思い切って転職した話。――神谷雅人

転職。あなたは考えたことがあるだろうか。
仕事内容に不満がある。給与や待遇に納得がいかない。
職場の人間関係。家庭の事情。
転職を考えるまではいかなくても、何かしらの悩みを抱えている人は少なくないはずだ。

ここにいる、一人の若者。
前職はあの大企業・デンソーだったという。
誰もが知っている一流企業。社名が自己紹介のようなものだ。

「僕はずっと、周りの言うままに流されて生きてきて。それでいいと思ったし、それがラクだったんです。だってレールは誰かが敷いてくれていたから」

そんな彼が、転職に踏み切った理由はなんなのだろうか。
敷かれたレールを逸脱してまで決めた、新しい道とは。
そしてその見つけ方は。

若く、瑞々しい彼の選択に祝福を。

全ては、生きている世界が狭かった。

彼は、神谷雅人さん。 愛知県高浜市出身で、今年29歳になる。すらりとした長身を包んだ真新しいスーツが、どことなく初々しさを醸し出している。時折冗談を交えながらも、自分の意見をハキハキと明朗に話す姿勢に好感が持てる。なにより笑顔が素敵だ。借り物競争で「さわやかな好青年」が出たら彼を連れてくれば間違いないだろう。

「小学生の時からずっと野球をやっていたこともあり、活発で元気な子どもだったと思います。女子の前でカッコつけたりもしたかな!練習してないのにできるぜ、みたいなのをカッコいいと思うようなタイプ(笑)。周りの目を気にするところはあったかもしれないです

スポーツに打ち込んだ中学生時代を経て、地元の工業系の高校に進んだ神谷さん。親に勧められて進路を決めたという。

「3つ上に兄がいるんですけど、僕が中3の頃デンソー短大に受かったんですよ。親は、デンソー関連に進んだ兄が誇らしかったのかな。安定している一流企業だし。それで僕にも『行くなら工業系を』ということで。僕も、そういうものなんだとなにも考えずに乗っかりました

行きたい高校も、将来やりたいこともなかったという。進学校に入れるほどの学力はあったにもかかわらず、周りの言うままに工業高校に進んでからというもの、どうにも退屈な日々。毎日がなんとなく過ぎていったそうだ。
そして兄と同じレールをそのまま行くように、神谷さんもデンソー短大へと進学、そしてデンソーに入社した。

「世間からは、『デンソーに行くなんてすごいね』と言われました。でもそれは僕じゃなくて、デンソーがすごいだけだろうと。だって僕はなにもしていないから。今思えば、生きている世界が狭かったんです。全てはそこにあると思っています。父も母も三河から出ることなく過ごし、特に親族で起業で大変な思いをした人がいたということもあって…。ガチガチの地元安定志向でした。もちろん、それが悪いわけではないし、工業も全然いいのだけれど、僕は僕で、もっと広く視野を持てばよかった。やり直せるなら、高校からやり直したいです

工業系に進んだことも、デンソーに入社したことも後悔していない。視野を広く持ち、自分の意思で決めてこなかったことを後悔しているのだ。

デンソーで働き始めた彼の毎日と、その中で大きく膨らみ始めたジレンマ。
レールはどこまで続くのか。

<第2回>に続く

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