生粋人

<第1回>“会話で呼吸”する。光田流・ビジネスパーソン5つのメソッド――光田寛和

現在、日本で働く人の数は約6732万人(2019年5月現在、総務省統計局調べ)。これは15歳以上の男女を合わせた総数であり、雇用形態も、業種も職種もさまざま。この国は、今、誰かの仕事の上に成り立っている。

東京都中央区・晴海トリトンスクエアを颯爽と闊歩する、一人のビジネスマンがいる。大手百貨店に長らく務めながら、2017年、銀座六丁目にある商業施設を創業したプロジェクトの中心者でもあった、光田寛和さんだ。現在はその役職を退いたものの、よりダイバーシティなビジネスの場へと身を移し、今なお経済の中枢・東京で新たな挑戦をし続けている。
彼もまた、約6700万人のうちの、1人だ。

これまでのビジネスで、彼は多くの人と出会ったという。「僕はミーハーだから。どこで何が起きているのか、誰がどんなことを考えているのか。自分で知りたくなるんです。その都度、呼吸するように会話をしてきた」。そういってさわやかな笑顔を見せてくれた。
幾多の“スクラップ・アンド・ビルド”の経験から導き出した「光田流のビジネスメソッド」を、余すところなく紹介していこう。

この連載を、今の日本を支える全ての人へ捧げる。

流儀その1.「ゼロからのモノづくりは空気づくりから始めよ」

光田さんは2013年より、銀座の商業施設開発プロジェクトのコアメンバーの1人となり、その劇的な開業を任された。長年、百貨店での勤務はあったものの、ショッピングモールのプロデュースは初めて。経験が活かされないだけでなく、いくつもの企業が参画するプロジェクトのため、各社のメンバーと協力し合い、やり遂げる必要があった。
別々の考えを持つ者どうしが、ゼロからモノをつくりあげていく。そのために光田さんがしたこととは。

「まずは、宅建の資格を取りました。他のメンバーと肩を並べるために。猛スピードで勉強しましたよ(笑)。そうすることで、僕の中でメンバーのひとりとして認めてもらう意味もありました。それから、僕は企画分野が長く、ファッションに疎かったので、ブランドひとつひとつに対して紙に起こしてレポートにまとめました。それこそ、バイヤーより詳しかったかもしれないですね(笑)。百貨店に務めていたのである程度のブランドは知っていました。けれど既存の概念が通用しないということで、新しく勉強しなくてはと。俗に“にわか”といわれるような『浅く広い知識』を、自分なりに『厚く』していくことにしました

ファッションブランドの最前線を知るために、プロジェクトのチームでニューヨークへ赴いたという。5日間の滞在で、実に110ブランド。衣服だけでなく、エンタメ、レストラン、雑貨やコスメまでも幅広く見て、触れて、学んだ。
視察を終え、プロジェクトのために集った4社はそれぞれ「こんな施設を作りたい」という思いを持っていた。

今度はそのアイデアを1つにまとめなければならない。このときに、どこか1社がイニシアチブを取ろうとするとダメになっていくんです。『うちはこういう実績があるから』『こういう展開ならうちが得意だから』。本当なら、ここで自分の強みもアピールしたいところ。けれどそういうときに大切なのは、過去の自慢ではなく、空気づくり。自分が率先して、空気づくりに徹するんです。他社を否定せず、それぞれの夢を語れるような空気にしていく。つまり、『場をファシリテートする』ということですね」

長引く会議、実のない会議。もしかしたら誰しも経験があるかもしれない。そもそも会議をする目的は、それぞれの理想や夢を語り合い、加算して、まだ見ぬモノをつくりあげていくこと。そのための『場の空気』をつくることが、第一歩なのだ。

「仲間がフラットな立場でいるか、同じ目線で物事を見ているか。自分が場をファシリテートすることで、まずはそういう空気づくりをする。モノづくりはまずはそこから生まれると思っています

「空気を読め」と、ことあるごとに耳にする。
しかし現代を生き抜くビジネスマンが必要なこと、それは「空気づくり」。
空気を読んで、ひっこんだり合わせたりしているヒマなどないのだ。
場をファシリテートし、空気を作る存在になってみてはいかがだろうか。

第2回>へ続く

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